子供が2歳になって、あちこちから英語教材の広告が届く。体験版を取り寄せてみると、教材は玩具やDVD、絵本など子供がとっつきやすいようによく研究されている。手遊び歌やポピュラーな童謡を使い、出てくる語彙は簡単な動作や体の部位、くだもの、乗り物の名前とその擬音など。なるほど、母語だってそういった語彙から習得していくもんな。大人向け外国語カリキュラムとの違いを感じて面白い。
よくできているといえば、広告もよくできていて、世の親たちの焦燥感をあおるのが上手。「あなたのお子様の頭と耳が柔らかい今こそ英語に親しみ、未来の可能性を広げてみませんか?」「英語の苦手な親御さんでも大丈夫!」「欧米の生活では常識として知っておかなければならないマザーグースを…」……。
ところで、そんな英語教材と同じように、外国人の児童・幼児を対象にした中国語教材はあるんだろうか。
子供向けの中国語検定テストとして、BCTと同系列のYCTがあるから、漢弁がなにか模擬問題集以外にも対応教材を作ってるかな?
しかし、かつて北京の新華書店で子供向け中国語教材を見て、良いものをピックアップして買ってくる、という仕事をしたことがあるのだけど、ほとんどが、中国で暮らす中国人の子供が国語を身につけるための教材。
海外で育ち親が中国語ネイティブの華人子弟向けというジャンルのものが、わずかに存在する。が、それらは指導者が中国語を理解している前提で編集されていて、テキストの文章も中国語環境での生活を前提にしているように思う。完全な日本語環境で暮らしている子供が取り組むには、指導者が乗り越えなければならないハードルが高い。
日本で幼児向けクラスを開設している民間学校の先生に聞いたところでは、教材は中国で使われている国語教育用のもの。受講者はたいてい両親かそのどちらかが中国人。ピンイン、読み書きを覚える目的で、親が教えると馴れ合いになって身に付かないので、外部の先生を求めて受講するとか。日本語ネイティブ家庭の子供が来たことはないとも。
ということで、外国語ネイティブの幼児が中国語に親しめるような教材、というのを見たことがない。
市場にあまたある英語教材は、遊び、食事、生活習慣、色、数、物の大小といった、子供が馴染んでいる身の回りの世界で英語に触れるように設計されている。英語をよく知らない親でも対応できるように、音声教材、映像教材も用意し、声かけ、相づちの仕方もさりげなく提示されている。
そんなのが中国語教材にもあっていいのではないかと思ってるんですが、どうかな。
ひょっとすると、そういった教材を作るのは漢弁でも孔子学院でもなく、非ネイティブのニーズを知り抜いてる我々の仕事なのかもしれない。